2012,01,17, Tuesday
アキュベリノス技術講座
シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第12回(第12章)はんだ付けは熟練工の腕次第 今号のポイント はんだ付けは奥が深い!・・・知っておきたいこと。 こんなこともあります 1:知っておきたいこと はんだ付けは単純な作業に見えますが、実は大変奥が深いものです。はんだ付け理論というものがあるとも聞きます。注意すべき主なファクターとしては、温度・時間・材料特性・添加剤が上げられます。 1)温度調節(温度・時間) はんだは温度を上げれば良いというものではありません。温度が上がれば電子部品にダメージがありますし、はんだそのものも酸化し易くなります。またはんだは、複数の金属からなる合金ですが、その組成によって融点が異なり、100℃以下でも溶ける低温はんだから220℃以上でやっと溶ける鉛フリーはんだまで様々です。そこで温度調節が非常に大事になります。 多くの工場で使用されるリフローマシンを例に温度調節を紹介します。リフローマシンは3m程度のラインを一定速度で被実装物を移動させますが、その間を6〜12ゾーンに区切り、それぞれのゾーンで温度プロファイルというプログラムに従って温度管理できます。温度は急に上昇、下降させるのではなく、一般的に時間経過に沿って、準備、予備加熱、本加熱、冷却という段階を作り、最低限の加熱で最高のはんだ付け状態が作れるように工夫されています。温度プロファイルの見本を図12-1に示します。 この温度プロファイルのカーブは、プリント基板の大きさ、厚み、銅箔厚、層数、そして搭載部品の種類、大きさ、数によって異なってきますので、通常はまず未実装状態のプリント基板に温度センサを複数個取り付けて加熱テストを行いながら、プロファイルのカーブを決めていきます。 ですから、実装依頼数以外に1枚余分に生基板を提供する方が良いのです。この温度プロファイルの作成には、技術者の腕が必要になります。 ![]() 2)鉛(共晶)はんだと鉛(Pb)フリーはんだの特性の違い はんだの材料でよく使用されるものに、大別して鉛はんだと鉛フリーはんだがあります。鉛はんだは共晶はんだとも呼びます。その特性の違いを表12-1に示します。過去から使われてきたのは鉛はんだですが、鉛の毒性が環境に与える問題が取り沙汰され、鉛を含まないはんだ(鉛フリーはんだ)が生まれ、いまでは製造機械やはんだゴテまで、鉛フリー専用のものがほぼ浸透しています。ただし、組成が違うので、様々な注意や工夫が必要となっています。 例えば、製造ラインは完全分離が必須であり、鉛フリーはんだは融点が高いので、より一層の温度管理が必要となります 鉛はんだは、融点も低く、はんだぬれ性が良く、比較的扱いやすいですが、鉛フリーはんだは融点が高く、電子部品へのダメージに細心の注意を払う必要があり、かつはんだぬれ性が悪いので、技術者の腕が試されます。 ![]() 3)手実装(手はんだ) マシンは万能ではありません。チップマウンタやインサートマシンでは対応できない形状の部品もあります。例えば、ピッチの広いアキシャル部品・ラジアル部品、あるいは、コネクタや端子台など。これらは人手で部品を置いていきます(手実装)。この時、実装図とプリント基板のシルクマークを確認しながら有極性部品の向きには細心の注意を払う必要があります。もし手はんだする場合も、特に試作のように数が少ないと、チェックは自動検査装置ではなく、目視になるので見落としには細心の注意が必要です。依頼時には現場でのチェック方法も合わせて確認して下さい。 4)銅箔に厚みのあるプリント基板の実装 電源用プリント基板などでは、大電流対応や熱放散のために、70μ以上の厚銅箔を使用することが多いです。しかし、この手の実装には腕が必要となります。熱が放散してはんだが溶け難いからです。マシンで可能な部品はできる限りマシンで行いますが、温度プロファイルが中々取れない時や温度を上げすぎて電子部品には危険と判断した時は、プレヒートを行った後に、手はんだを行う場合もあります。いずれにしても、かなりの熟練度が必要な作業となります。 2:こんなこともあります 1)リペアー、リボール BGAではんだ不良(中心部ではんだが溶けていない、あるいはショート)を起こした場合の修復手段として、リペア、リボール技術を使って、再度BGAを蘇らせることができます。ただし、はんだ付け温度に加熱できる回数が、LSIによって決められているので、確認してから行うことが必要です。 2)BGAのジャンパー配線 プリント基板へ実装済みのBGA中心部のボールにジャンパー線の一端をはんだ付けして、信号を外部に引き出してくる技術もあります。万が一、実装後に回路接続を変更したい際には、利用できる技術です。できるかどうかは、実装工場に問い合わせて下さい。 3:組立ての指示 1)リードの曲げ加工 リードの曲げ加工が必要な場合には、必ず指示書を出して下さい。図12-2のようなケースの場合、プリント基板上のシルクマークだけでは、実装担当者は判断できません。きっちり確認して来る実装工場もありますが、もし、思い込みで作業を進めてしまっては一大事です。必ず加工指示書を出して下さい。 ![]() 2)ヒートシンクの取り付け ヒートシンクを取り付ける場合も組立て指示書を出して下さい。ヒートシンク自体のGNDへの接続や非接続、ヒートシンクと基板の間に絶縁物を挿入させたい場合などの指示です。 また、ヒートシンクは自分で組み立てたい場合でも、ビス止め穴の高さは指示します。使用するビスや放熱シートの種類や数量、手配などです。また、シリコングリスの塗布をするかしないかもです。 今回で、アキュベリノス技術講座 シーズン1『プリント配線板について(初級編)』は終わります。全部で12回でしたが、回路設計後の工程について、最低限度ではありますが説明して参りました。最近の回路設計者にとってはあまり踏み込まない領域かと思いますので、聞き慣れない言葉や、説明が足らない部分もあったかと思います。如何でしたでしょうか? 次回より、アキュベリノス技術講座 シーズン 2『プリント配線板について(応用編)』が始まります。ここでは、LVDSやDDR3などで使用される高速差動回路が確実に動作するプリント基板にするためのポイントなどについて説明をする予定です。ご期待下さい。 第12回(第12章)はんだ付けは熟練工の腕次第 終わり ご意見、ご質問: tetsuzan@accverinos.co.jp (本書は、株式会社アキュベリノスの著作物です。許可なく掲載、転載等を行うことを禁止します。)
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