2011,09,02, Friday
アキュベリノス技術講座
シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第9回(第9章)取り数・シートと価格について 今号のポイント プリント基板の取り数とは何か? ☆取り数によって価格が違ってくる理由を知る。 ☆外形加工方法と表面処理について 1:プリント基板の取り数とは何か? 第7章で解説したプリント基板の基材を扱う材料メーカーでは、一般的に販売する大きさが決まっています。これを『定尺』と呼んでいます。一般的に定尺とは、「1.0m×1.0m」あるいは「1.0m×1.2m」のいずれかの大きさになっています。この定尺単位で価格が決められています。 次に、プリント基板工場は購入した定尺サイズの基材を、製造ラインの幅やメッキ槽やエッチング槽の深さに合わせたサイズに裁断します。これは工場によって若干違ってきますが、『ワークサイズ』と呼んでいます。表9-1に代表的なワークサイズを示します。 ![]() このサイズの中に希望するプリント基板のサイズを当てはめて行くことになりますが、ここに何枚の希望サイズが、何枚×何枚で当てはめられるか?これを、『取り数』と呼んでいます。 ただし、ここでプリント基板外形と基板外形の間は、ある程度離して当てはめないといけません。その見本を図9-1に示します。これらの数字は、工場によって異なりますので、事前に確認をして下さい。 ここで、開発ボードの希望サイズを例えば200mm×120mmとします。表9-1のNo.1のワークサイズだと1×2枚しか入りません。しかし、No.2のワークサイズだと2×3枚取れます。 No.1 ⇒1m×1.2m定尺で3×3のワークサイズが取れるので合計18枚の製品が取れます。 No.2 ⇒1m×1m定尺で2×2のワークサイズが取れるので合計24枚の製品が取れます。 ![]() 2:取り数によって価格が違ってくる理由 ここから価格の計算ですが、仮に2層の開発ボードのプリント基板製造が1m×1mで2万円掛るとしますと、それぞれの単価計算は以下になり、No2の単価が採用されます。 No.1 ⇒ 2万円×1.2÷18枚=¥1,334 No.2 ⇒ 2万円×1.0÷24枚= ¥834 このようにして、プリント基板の単価は決定されますので、微妙なプリント基板サイズの違いで価格が変わってくることを理解して下さい。プリント基板サイズがある程度融通が効く場合は、アートワーク設計者に「一番取り数の良いプリント基板サイズで設計すること」と指定することも可能です。 3:外形加工の種類と表面処理について 1)外形加工の種類 まず外形加工について以下4種が代表的です。 ルーター加工:φ1〜2程度のドリル刃の腹部分でプリント基板の外周を切って行く加工。 その一種でミシン目加工(図9-2参照)があります。 ミシン目加工:図9-2のように穴とスリットの組合せで加工し、強度を保ったまま、後で折り曲げて切り離せるように加工。 Vカット:2枚の円盤カッターでプリント基板の裏表にV溝を形成し、ある程度の強度を保ったまま、後で折り曲げて切り離せるように加工したもの。 板厚の中心部の残りの厚みは指定可能。一般的にミシン目よりは折り曲げ強度は弱いことに注意して下さい。 金型加工:量産製造の場合に使う。 金型冶具(当然治具代が必要です)を作ってプレス加工で、プリント基板外形を抜いて行きます。 細かい複雑な外形の場合は、プレス抜きの失敗がないように補正が必要なので、その形状はプリント基板工場に任せましょう。 ![]() ![]() ![]() ![]() 2)表面処理 表面処理とは、プリント基板製造の最終段階に近い工程で、パッドやランド部など銅が剥き出しになっている部分の保護処理をどのようにするかということです。以下にその種類を列挙します。これはプリント基板にどういう部品を実装するかで決まるので、回路設計者が指定をします。 はんだレベラー:溶けたはんだを高温の熱風でコーティングしたもの。 銅の酸化を防ぎながら、実装時のはんだ濡れ性が増します。ただし、搭載部品が共晶はんだなのか鉛フリーはんだなのかで必ず指定することが必要です。最も多く使われる処理方法です。 金フラッシュ:銅の上にまずニッケルメッキを施した上に、無電解金メッキを行うこと。 あらかじめはんだ付いているはんだレベラーでは、はんだ量が多すぎる場合に使用されます。BGAやCSPはすでにはんだボールが端子に付加されているため、はんだ量が多過ぎるとショートを起こし易いのです。 しかし、はんだレベラーに比べ若干高価です。また、無電解金メッキは溶液管理をシビアでかつ頻繁に行う必要があるために、自分の工場ではラインを持たず、専門の工場に委託する場合が少なくありません。そのために工期も必要になってきます。 銅スル:表面処理を行わず、銅剥き出し状態にすること。 最もコストが掛りませんが、すぐに酸化が始まり、実装時のはんだ濡れ性が低下するので、すぐに実装を行う時のみに採用します。 水溶性フラックス:上記の銅スル基板に対して、薄いフラックスをコーティングする処理のこと。 銅スル状態よりは酸化を遅らせることはできますが、手で触ったりするとフラックスがとれてしまうので、取扱には十分に注意し、比較的すぐに実装する場合に使用されます。しかし、価格や納期では金フラッシュよりも断然有利です。 今回はここまでとします。次回は第10回(第10章)「一般的な実装作業方法(搭載部品別)」を予定しています。 第9回(第9章)取り数・シートと価格について 終わり ご意見、ご質問:tetsuzan@accverinos.jp (本書は、株式会社アキュベリノスの著作物です。許可なく掲載、転載等を行うことを禁止します。)
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| 開発こぼれ話 | 12:15 PM | comments (x) | trackback (x) | |