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アキュベリノス技術講座 シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第12回(第12章)はんだ付けは熟練工の腕次第
アキュベリノス技術講座
シーズン1 プリント配線板について(初級編)

第12回(第12章)はんだ付けは熟練工の腕次第


今号のポイント
はんだ付けは奥が深い!・・・知っておきたいこと。
こんなこともあります


1:知っておきたいこと

 はんだ付けは単純な作業に見えますが、実は大変奥が深いものです。はんだ付け理論というものがあるとも聞きます。注意すべき主なファクターとしては、温度・時間・材料特性・添加剤が上げられます。

1)温度調節(温度・時間)

 はんだは温度を上げれば良いというものではありません。温度が上がれば電子部品にダメージがありますし、はんだそのものも酸化し易くなります。またはんだは、複数の金属からなる合金ですが、その組成によって融点が異なり、100℃以下でも溶ける低温はんだから220℃以上でやっと溶ける鉛フリーはんだまで様々です。そこで温度調節が非常に大事になります。
 多くの工場で使用されるリフローマシンを例に温度調節を紹介します。リフローマシンは3m程度のラインを一定速度で被実装物を移動させますが、その間を6〜12ゾーンに区切り、それぞれのゾーンで温度プロファイルというプログラムに従って温度管理できます。温度は急に上昇、下降させるのではなく、一般的に時間経過に沿って、準備、予備加熱、本加熱、冷却という段階を作り、最低限の加熱で最高のはんだ付け状態が作れるように工夫されています。温度プロファイルの見本を図12-1に示します。
 この温度プロファイルのカーブは、プリント基板の大きさ、厚み、銅箔厚、層数、そして搭載部品の種類、大きさ、数によって異なってきますので、通常はまず未実装状態のプリント基板に温度センサを複数個取り付けて加熱テストを行いながら、プロファイルのカーブを決めていきます。
 ですから、実装依頼数以外に1枚余分に生基板を提供する方が良いのです。この温度プロファイルの作成には、技術者の腕が必要になります。





2)鉛(共晶)はんだと鉛(Pb)フリーはんだの特性の違い

 はんだの材料でよく使用されるものに、大別して鉛はんだと鉛フリーはんだがあります。鉛はんだは共晶はんだとも呼びます。その特性の違いを表12-1に示します。過去から使われてきたのは鉛はんだですが、鉛の毒性が環境に与える問題が取り沙汰され、鉛を含まないはんだ(鉛フリーはんだ)が生まれ、いまでは製造機械やはんだゴテまで、鉛フリー専用のものがほぼ浸透しています。ただし、組成が違うので、様々な注意や工夫が必要となっています。
 例えば、製造ラインは完全分離が必須であり、鉛フリーはんだは融点が高いので、より一層の温度管理が必要となります
 鉛はんだは、融点も低く、はんだぬれ性が良く、比較的扱いやすいですが、鉛フリーはんだは融点が高く、電子部品へのダメージに細心の注意を払う必要があり、かつはんだぬれ性が悪いので、技術者の腕が試されます。





3)手実装(手はんだ)

 マシンは万能ではありません。チップマウンタやインサートマシンでは対応できない形状の部品もあります。例えば、ピッチの広いアキシャル部品・ラジアル部品、あるいは、コネクタや端子台など。これらは人手で部品を置いていきます(手実装)。この時、実装図とプリント基板のシルクマークを確認しながら有極性部品の向きには細心の注意を払う必要があります。もし手はんだする場合も、特に試作のように数が少ないと、チェックは自動検査装置ではなく、目視になるので見落としには細心の注意が必要です。依頼時には現場でのチェック方法も合わせて確認して下さい。

4)銅箔に厚みのあるプリント基板の実装

 電源用プリント基板などでは、大電流対応や熱放散のために、70μ以上の厚銅箔を使用することが多いです。しかし、この手の実装には腕が必要となります。熱が放散してはんだが溶け難いからです。マシンで可能な部品はできる限りマシンで行いますが、温度プロファイルが中々取れない時や温度を上げすぎて電子部品には危険と判断した時は、プレヒートを行った後に、手はんだを行う場合もあります。いずれにしても、かなりの熟練度が必要な作業となります。

2:こんなこともあります

1)リペアー、リボール

 BGAではんだ不良(中心部ではんだが溶けていない、あるいはショート)を起こした場合の修復手段として、リペア、リボール技術を使って、再度BGAを蘇らせることができます。ただし、はんだ付け温度に加熱できる回数が、LSIによって決められているので、確認してから行うことが必要です。

2)BGAのジャンパー配線

 プリント基板へ実装済みのBGA中心部のボールにジャンパー線の一端をはんだ付けして、信号を外部に引き出してくる技術もあります。万が一、実装後に回路接続を変更したい際には、利用できる技術です。できるかどうかは、実装工場に問い合わせて下さい。

3:組立ての指示

1)リードの曲げ加工

 リードの曲げ加工が必要な場合には、必ず指示書を出して下さい。図12-2のようなケースの場合、プリント基板上のシルクマークだけでは、実装担当者は判断できません。きっちり確認して来る実装工場もありますが、もし、思い込みで作業を進めてしまっては一大事です。必ず加工指示書を出して下さい。





2)ヒートシンクの取り付け

 ヒートシンクを取り付ける場合も組立て指示書を出して下さい。ヒートシンク自体のGNDへの接続や非接続、ヒートシンクと基板の間に絶縁物を挿入させたい場合などの指示です。
また、ヒートシンクは自分で組み立てたい場合でも、ビス止め穴の高さは指示します。使用するビスや放熱シートの種類や数量、手配などです。また、シリコングリスの塗布をするかしないかもです。



今回で、アキュベリノス技術講座 シーズン1『プリント配線板について(初級編)』は終わります。全部で12回でしたが、回路設計後の工程について、最低限度ではありますが説明して参りました。最近の回路設計者にとってはあまり踏み込まない領域かと思いますので、聞き慣れない言葉や、説明が足らない部分もあったかと思います。如何でしたでしょうか?
次回より、アキュベリノス技術講座 シーズン 2『プリント配線板について(応用編)』が始まります。ここでは、LVDSやDDR3などで使用される高速差動回路が確実に動作するプリント基板にするためのポイントなどについて説明をする予定です。ご期待下さい。

第12回(第12章)はんだ付けは熟練工の腕次第 終わり
ご意見、ご質問: tetsuzan@accverinos.co.jp

(本書は、株式会社アキュベリノスの著作物です。許可なく掲載、転載等を行うことを禁止します。)


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アキュベリノス技術講座 シーズン1 現場は様々な部品形状との格闘
アキュベリノス技術講座
シーズン1 プリント配線板について(初級編)

現場は様々な部品形状との格闘


今号のポイント
一般的な自動部品実装作業フロー
アートワーク設計、実装現場ではどんなことに注意しているのか?


1:一般的な自動部品実装作業フロー

 図11-1に一般的な自動部品実装の作業フローを示します。これはリード型もチップ型もすべて部品面に搭載する場合になります。マシンでは搭載できない異型部品は手挿入を行ってからディップマシンに流す場合もありますが、狭ピッチリード型コネクタなどディップマシンに流すとはんだショートする部品は、ディップ後に手実装(手はんだ)してから検査に持ち込みます。
 また、チップ型部品が基板裏面にも搭載される場合は、図11-1のチップマウンタで一旦、部品面側を搭載しリフロー炉を通した後に、ひっくり返して基板裏面側を接着剤塗布して部品を固定してから図11-1のインサートマシンを経て、ディップマシンで裏面全体をはんだ付けします。つまり、部品搭載面や搭載されている部品形状によって、作業フローは変わります。
 メタルマスクは、アートワーク設計者から出力されたガーバーデータを使って作製されます。単なるステンレス板にパッド部分が抜けている(開口)だけですが、開口の大きさや板の厚み指定によってはんだ量を調整する場合もあります。また、基板外形サイズによっては表版と裏版を1枚で仕上げて、版代を抑えることもありますので、実装工場と相談して下さい。




2:部品の搭載面や搭載部品のパッケージ形状によって考慮する事項

1)パッドサイズの違い

 前述のように、一般的に部品面はリフローを、基板裏面ではフローにてはんだ付けされることが多いです。しかし、はんだの付き方が大きく違います。静かにはんだが溶けてなじんでいくリフロー法に対して、フロー法は溶けたはんだが瞬間的に通り付着しますので、リフローに比べてパッドサイズを大きくしてやる必要があります。
 従って、アートワーク設計のライブラリ登録工程の時には、すでにどのようなはんだ付け方法を行うかが決まっている必要があることを知っておいて下さい。パターンの引き回しも違ってきます。





2)部品搭載方向の制限

 フロー法によるはんだ付けの場合は、前述のように、溶けたはんだが瞬間的にランドやパッドを通過するのですが、はんだには粘性があるため、狭いところには入り込み難く、一度付いたパッドやランドからの切れも悪いです。
 そのため、どうしてもはんだ面にチップ部品を実装しなければならない場合は、図11-3のようにディップ方向(はんだの流れ)に対して平行に、チップ部品が縦一列に接近して配置すると、きれいなフィレットが形成できにくくなったり、狭ピッチコネクタに至っては、はんだの尾が引いて隣接ピンとのショートを起こしてしまったりするので、アートワーク設計の部品配置の段階から意識して配置する必要があります。





3)フィレットとはんだ流れ

 フィレットとは、はんだ付けされた際の部品電極部と基板上のパッド間で形成されるはんだによる傾斜(富士山の裾野のようなカーブ)のことで、良いはんだ付けは、そのカーブも美しいものです。溶けたはんだには適度な粘性があるために起こる現象で、リフローでもフローでも手はんだでも形成されます。
 また、フロー法でリード型のコネクタを実装するときは、はんだの流れに垂直に配置して、ランド部にティアドロップ形状を形成させておく方が良いです。





4)部品間隔

 インサートマシンはチャックと呼ばれるロボットハンドで部品を掴んで指定座標で挿入するために、先行実装部品が近すぎると接触を起こしてしまうので、指定の間隔を保って配置する必要があります。
 具体的な距離はマシンによって異なりますので、アートワーク設計時には実装工場の基準書を入手しておく必要があります。




5)クリンチとその逃げ

 量産基板の場合は、リード型部品を挿入した際に、基板をひっくり返しても抜けないように、クリンチと呼ばれる「リード曲げ」を行います。この場合、曲げたリード同士が当たらない方向と距離を考えた部品配置が必要です。また、曲げたリードの先端とパターンが接触しないように、配線を行うこともアートワーク設計に要求されます。





6)部品直下の穴には注意

 フロー法によるはんだ付けを行う場合は、部品直下の穴(キリ穴や角穴、VIAなど)を避けて設計することが肝心です。穴から溶けたはんだが噴出し、部品の下部を痛めてしまう可能性があるからです。
 アートワーク設計後の検図時には、こういう点もチェックをして下さい。





7)認識マーク

 チップマウンタはプリント基板との部品の位置や傾きを正確に補正しなければなりません。そこで必要なのが、この認識マークです。最低限、部品や基板の斜め対角の2カ所にこのマークがあれば補正が可能になります。
 2ピンや3ピンのチップ部品には個別には必要ありませんが、多ピンや狭ピッチで精度の必要なQFPやSOPには個別に設けます。はんだ面にも該当部品が搭載してあれば、はんだ面に認識マークが必要になります。





 今回はここまでとします。次回は第12回(第12章)「はんだ付けは熟練工の腕次第」を予定しています。
 初級編の最終となります。

第11回(第11章)現場は様々な部品形状との格闘 終わり
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(本書は、株式会社アキュベリノスの著作物です。許可なく掲載、転載等を行うことを禁止します。)


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アキュベリノス技術講座 シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第10回(第10章)一般的な実装作業方法(搭載部品別)
アキュベリノス技術講座
シーズン1 プリント配線板について(初級編)

第10回(第10章)一般的な実装作業方法(搭載部品別


今号のポイント
部品形状別に作業方法の紹介
一般的なはんだ付け方法


1:部品形状別に作業方法の紹介

 部品の形状別の呼び名を図10-1に示します。この他にどれにも属さないものを異型部品と呼んでいます。



 部品形状は大別して表面実装部品(SMD:Surface-Mounted Device)、リード型部品、異型部品の3種類があります。

 搭載方法には、大別して2種類あり、自動実装と手実装です。
手実装とは、その名の通り、手による部品の搭載とはんだごてによるはんだ付け作業のことを言います。ここでは、自動実装について説明をして行きます。

 自動実装の場合は、メタルマスク用ガーバーデータと部品座標データが必要になり、まず実装現場では、インサートマシンやチップマウンタに座標データを読み込ませた後に、実際の部品(リール梱包の向き)と座標データの方向とを一つ一つ確認して行くプログラミング作業を行います。ここで有極性部品の向きを間違えると不良となります。
部品形状別に対応する実装マシンとそれぞれ対応できるプリント基板サイズを表10-1と表10-2に示します。これは一例なので、実際には必ず確認して下さい。





2:一般的な自動はんだ付け方法

 表10-2でも出てきましたはんだ付方法を説明します。大別すると、リフロー法とフロー(ディップ)法の2種類があり、それぞれに対応したマシンが用意されています。

リフローマシンとフローマシンのイメージ図を図10-2に示します。





 リフロー法においては、プリント基板全体を加熱しますが、その温度管理は時間とともに調整でき、プログラムできるようになっています。この時系列での温度管理グラフを温度プロファイルと呼んでおり、その内容は搭載部品の種類や大きさや数量・搭載面によって異なり、工場のノウハウとして保有しています。なので、日頃使用しない部品形状を搭載する場合は、事前の温度プロファイル作製が必要になり、そのために未実装状態の生のプリント基板が1枚必要です。
 今のリフロー炉は、炉内を複数のゾーンに分けて、それぞれのゾーンでの温度管理ができるマシンが流通していますので、さらに丁寧な温度管理ができます。この温度プロファイル関連は第12章でも説明しますので、そちらも参照して下さい。

 上記のはんだ付け方法はどちらもプリント基板をマシンのレールに乗せて搬送しながらはんだ付けを行うため、ある注意が必要となります。それは実装のデッドスペースと基板外形コーナーの処理です。
 デッドスペースは、レール部分の部品搭載禁止のことで、図10-3のような「捨て板」部を形成させて、レールに挟まれる部分と搬送用の基準穴を持つ役目も合わせ持ちます。
外形の四隅のRまたはCの処理は、マシン投入時のレールに入り易くするためです。




 図10-4は捨て板を付けずに、プリント基板の内側に搬送用の基準穴を設ける場合で、その時も周囲にはデッドスペースが生まれ、搭載部品の配置を考慮する必要があります。これは、近い将来に量産基板に移行する場合に使われます。量産時にはいちいち捨て板をカットするのは手間となります。
 しかし、部品搭載面積は限定的になる訳ですから、密度が高くなる傾向になりますので、アートワーク設計者はもちろん回路設計者も概略配置の検討段階から注意が必要となります。




 今回はここまでとします。次回は第11回(第11章)「現場は様々な部品形状との格闘」を予定しています。

第10回(第10章)一般的な実装作業方法(搭載部品別) 終わり
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アキュベリノス技術講座 シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第9回(第9章)取り数・シートと価格について
アキュベリノス技術講座
シーズン1 プリント配線板について(初級編)

第9回(第9章)取り数・シートと価格について


今号のポイント
プリント基板の取り数とは何か?
 ☆取り数によって価格が違ってくる理由を知る。
 ☆外形加工方法と表面処理について

1:プリント基板の取り数とは何か?

 第7章で解説したプリント基板の基材を扱う材料メーカーでは、一般的に販売する大きさが決まっています。これを『定尺』と呼んでいます。一般的に定尺とは、「1.0m×1.0m」あるいは「1.0m×1.2m」のいずれかの大きさになっています。この定尺単位で価格が決められています。
 次に、プリント基板工場は購入した定尺サイズの基材を、製造ラインの幅やメッキ槽やエッチング槽の深さに合わせたサイズに裁断します。これは工場によって若干違ってきますが、『ワークサイズ』と呼んでいます。表9-1に代表的なワークサイズを示します。



 このサイズの中に希望するプリント基板のサイズを当てはめて行くことになりますが、ここに何枚の希望サイズが、何枚×何枚で当てはめられるか?これを、『取り数』と呼んでいます。

 ただし、ここでプリント基板外形と基板外形の間は、ある程度離して当てはめないといけません。その見本を図9-1に示します。これらの数字は、工場によって異なりますので、事前に確認をして下さい。
 ここで、開発ボードの希望サイズを例えば200mm×120mmとします。表9-1のNo.1のワークサイズだと1×2枚しか入りません。しかし、No.2のワークサイズだと2×3枚取れます。

  No.1 ⇒1m×1.2m定尺で3×3のワークサイズが取れるので合計18枚の製品が取れます。
  No.2 ⇒1m×1m定尺で2×2のワークサイズが取れるので合計24枚の製品が取れます。



2:取り数によって価格が違ってくる理由

 ここから価格の計算ですが、仮に2層の開発ボードのプリント基板製造が1m×1mで2万円掛るとしますと、それぞれの単価計算は以下になり、No2の単価が採用されます。

  No.1 ⇒ 2万円×1.2÷18枚=¥1,334
  No.2 ⇒ 2万円×1.0÷24枚= ¥834

 このようにして、プリント基板の単価は決定されますので、微妙なプリント基板サイズの違いで価格が変わってくることを理解して下さい。プリント基板サイズがある程度融通が効く場合は、アートワーク設計者に「一番取り数の良いプリント基板サイズで設計すること」と指定することも可能です。

3:外形加工の種類と表面処理について

1)外形加工の種類

 まず外形加工について以下4種が代表的です。
 ルーター加工:φ1〜2程度のドリル刃の腹部分でプリント基板の外周を切って行く加工。
        その一種でミシン目加工(図9-2参照)があります。
 ミシン目加工:図9-2のように穴とスリットの組合せで加工し、強度を保ったまま、後で折り曲げて切り離せるように加工。
 Vカット:2枚の円盤カッターでプリント基板の裏表にV溝を形成し、ある程度の強度を保ったまま、後で折り曲げて切り離せるように加工したもの。
板厚の中心部の残りの厚みは指定可能。一般的にミシン目よりは折り曲げ強度は弱いことに注意して下さい。
 金型加工:量産製造の場合に使う。
金型冶具(当然治具代が必要です)を作ってプレス加工で、プリント基板外形を抜いて行きます。

 細かい複雑な外形の場合は、プレス抜きの失敗がないように補正が必要なので、その形状はプリント基板工場に任せましょう。









2)表面処理

 表面処理とは、プリント基板製造の最終段階に近い工程で、パッドやランド部など銅が剥き出しになっている部分の保護処理をどのようにするかということです。以下にその種類を列挙します。これはプリント基板にどういう部品を実装するかで決まるので、回路設計者が指定をします。

 はんだレベラー:溶けたはんだを高温の熱風でコーティングしたもの。
銅の酸化を防ぎながら、実装時のはんだ濡れ性が増します。ただし、搭載部品が共晶はんだなのか鉛フリーはんだなのかで必ず指定することが必要です。最も多く使われる処理方法です。
 金フラッシュ:銅の上にまずニッケルメッキを施した上に、無電解金メッキを行うこと。
あらかじめはんだ付いているはんだレベラーでは、はんだ量が多すぎる場合に使用されます。BGAやCSPはすでにはんだボールが端子に付加されているため、はんだ量が多過ぎるとショートを起こし易いのです。
 しかし、はんだレベラーに比べ若干高価です。また、無電解金メッキは溶液管理をシビアでかつ頻繁に行う必要があるために、自分の工場ではラインを持たず、専門の工場に委託する場合が少なくありません。そのために工期も必要になってきます。
 銅スル:表面処理を行わず、銅剥き出し状態にすること。
最もコストが掛りませんが、すぐに酸化が始まり、実装時のはんだ濡れ性が低下するので、すぐに実装を行う時のみに採用します。
 水溶性フラックス:上記の銅スル基板に対して、薄いフラックスをコーティングする処理のこと。
銅スル状態よりは酸化を遅らせることはできますが、手で触ったりするとフラックスがとれてしまうので、取扱には十分に注意し、比較的すぐに実装する場合に使用されます。しかし、価格や納期では金フラッシュよりも断然有利です。

 今回はここまでとします。次回は第10回(第10章)「一般的な実装作業方法(搭載部品別)」を予定しています。

第9回(第9章)取り数・シートと価格について 終わり
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アキュベリノス技術講座 シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第8回(第8章)プリント基板の製造と検査
アキュベリノス技術講座
シーズン1 プリント配線板について(初級編)

第8回(第8章)プリント基板の製造と検査


今号のポイント
 ☆基板製造に投入される指示情報とは何か?
 ☆基板製造から検査までの工程を紹介

1:プリント基板製造に投入される指示情報

 これまでに紹介しましたが、プリント基板製造工程への指示情報は、回路設計者がアートワーク設計者へ指示した内容を基に、アートワーク設計者が作成します。大袈裟かもしれませんが、回路設計者の指示もしくはアートワーク設計者の指示が間違っていれば、間違ったプリント基板が製造されてしまうことになります。短時間で済むことですので、アートワーク設計者が作成した指示内容を回路設計者も念のために、自分の指示した内容と同じかなどを確認されることをお奨めします。物を作ってからの不具合はお互いに時間とお金の浪費になります。
 では、どの情報に確認すべき内容があるのかを、個別に解説して行きます。

1)プリント基板製造用データ

 プリント基板を製造するために必要なデータには、ドリルデータ(NCデータ)とガーバーデータの2種類があります。回路設計者が製造データそのものを確認する必要はありません。また基板工場やアートワーク設計会社では、リピート発注の有無に関係なく一定期間データ保管します。ただ自分が設計したものであり、最新版管理を社内でされるケースも増えてきておりますので、アートワーク設計者から製造データを納品させることもあります。
 ガーバーデータとは、ガーバーフォーマットと呼ばれるEIA RS-274-Dのプロットデータフォーマットで、エッチング前のフィルム描画時に使うプリント基板製造特有のデータフォーマットで、RS-274D(標準ガーバー)とRS-274X(拡張ガーバー)の2種類があります。このガーバーフォーマットは標準化されてはいるものの、ある程度の自由度が許されているので、書き出し/読み込み時の条件設定の不一致によって、正しいアートワークイメージが再現出来ない場合があります。このため相互間での正しいデータの受け渡しのためには、いくらかの予備知識が必要になります。

2)ガーバーデータリスト

 図8-1に例を示します。
 例では、上半分がガーバーデータの各ファイルの名称が列挙され、下の2行分がドリルデータのファイル名称(見本ではスルホールと素穴が別に)が列挙されています。ガーバーデータの各層というのは、パターン層だけでなく、シルクやレジストも各層の中に当然入ります。ここで自分が作りたい層構成があるのか確認できます。

 ドリルデータはガーバーデータのフォーマットではなく、穴径毎のXY座標がテキストデータで羅列されているフォームですが、ファイル名を指示するために、このリストに列挙しています。ここでは、「ちゃんとドリルデータも出力されているな」という程度の確認になります。




3)プリント基板要求仕様

 図8-2に見本を示します。
 アートワーク設計者がプリント基板工場に製造依頼するときの表紙部分になります。プリント基板工場では、これを基に工場内の作業指示書を作成していきます。表面処理については、次章で解説します。これはすべて、回路設計者も確認できる内容です。





4)外形図・穴図

 図8-3に例を示します。
 外形寸法図の中に、穴径を示す記号(見本ではアルファベット)をそれぞれに該当するXY座標の位置に示している図面です。ここでは、非スルホールや特殊な穴があれば確認の対象になります。





2:プリント基板製造から検査までの工程

 ここからはプリント基板工場内のことになります。
前述のガーバーデータは、露光工程に使うフィルムを作成するのに使用します。ただし、フィルムという素材は環境の温度と湿度によって伸び縮みしますので、寸法の補正をCAM(Computer Aided Manufacturing)ツールにて行います。
 図8-4で両面基板の製造工程の概略を示します。
 これは、大半のプリント基板工場で採用されている、パネルメッキを使ったサブトラクティブ法と呼ばれている方法です。図のように、メッキとエッチングによってパターンを形成して行きます。




 この図では省略していますが、各工程間にはメッキ液やエッチング液の中和工程、および水による洗浄工程を通りますので、プリント基板というのは極めてウェットな状況で作製されているのです。

 4層基板は、上記の工程で内層パターン(2層3層)を形成させ、その後にプリプレグ(第7章で解説)と外層(1層4層)用の銅箔を重ね、プレス工程に入ります。その後再び図8-4の穴あけ工程から同じ工程を通って外層のパターンを形成して完成されます。6層以上の高多層基板も、これらの工程を繰り返して作製されます。

 最近では、内層の品質向上の一貫として、内層パターンが形成された後に、AOI(Area Of Interest)検査を導入しているところが多くなっています。

 その後は、フライングチェッカーなどの電気検査と最終外観検査を行ってOKであれば出荷となります。
 電気検査とは、仕上がった基板の表面にあるパターンの端(主に部品挿入用スルホールランドやSMDのパッド)同志が導通しているかを、針を当て、針間同志を通電させ計測します。検査すべきパターンの端同志の情報は、ガーバーデータを使って、工場内のCAM工程で作製されます。そのデータに従って、針が目的の端子まで可動しては導通検査を繰り返すわけです。ですので、検査時間は結構かかりますしデータ量によって変化しますので、試作量程度なら良いですが、量産向きではありません。量産では全データを一度に通電検査ができる治具を作製して対応しますが、その治具作製費が必要になります。

 最終外観検査では、目視によるチェック方法がほとんどですが、その時に使われる判定基準が限度見本と呼ばれるものです。その見本を図8-5に示します。




 今回はここまでとします。次回は第9回(第9章)「取り数・シートと価格について」を予定しています。

第8回(第8章)プリント基板の製造と検査 終わり
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アキュベリノス技術講座 シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第7回(第7章)プリント基板の主要な構造と材料
アキュベリノス技術講座
シーズン1 プリント配線板について(初級編)

第7回(第7章)プリント基板の主要な構造と材料


今号のポイント
  ☆プリント基板の構造や材料にはどんなものがあるのか?
  ☆電子回路設計時に注意しておくことはどんなことか?

第7章から第9章にかけては、プリント基板の構造から製造までを説明します。

1:プリント基板材料の種類





 基材の一般的な呼称ではFR(Flame retardant)グレードで呼ばれることが多いです。紙フェノールは安価で加工し易く、家電製品での片面基板や両面基板で使用されます。最近の片面・両面基板ではCEM-3という紙フェノールより耐熱・耐湿性に優れ、FR-4より安価なものが多用されています。
 上記の基材に銅箔を張ったものを銅張積層板と呼び、材料メーカーから販売され、基板工場はそれを仕入れてプリント基板に加工して行きます。図7-1に銅張積層板の例を示します。





 最近はこの他に、両面基板では「CEM (Composite epoxy material)-3」と呼ばれるエポキシ樹脂を含浸させたガラス織布とガラス不織布を重ねたコンポジット材が、家電製品を中心に非常に多く使われています。FR-4に比べて価格が安く、切削性に優れているために丸穴・角穴・外形を金型加工し易いのが特徴です。ただし、寸法安定性、機械強度はFR-4よりも劣るため、多層板には不向きです。

2:構造

 ここではガラスエポキシ系の材料を使用した多層基板を例に話を進めます。
多層基板は図7-1の銅張積層板と接着剤の役目をするプリプレグというシートを重ねた構造になっています。プリプレグは、基材と同じくガラス繊維布にエポキシ樹脂を含浸させた材料で作られていますが、異なるのはエポキシ樹脂が完全には硬化していないBステージと呼ばれる状態のものであるという点です。このBステージとは、熱硬化性樹脂が半硬化状態のもので、温度を上げると一旦溶けますが、その後冷えると完全に硬化(Cステージと呼びます)して、次に温度を加えても溶けません。

 図7-2には4層基板の構造を示します。プリント基板の製造工程では、このように積み重ねてからプレス工程で高温高圧にしてプリプレグを一旦溶かして銅張積層板同士を接着させています。プレス後の状態を図7-3に示します。









3:回路設計時に注意しておく点

 回路設計者はプリント基板の層構成も指示すべきであるということです。個別に見て行きましょう。

1)銅箔間の層間距離は案外短いということ

 図7-1や図7-2でわかるように、樹脂部分の厚みは様々な厚みがあり、薄いものでは50μm〜60μm程度の時もあるということです。層間距離が短いということは、層間での電磁的影響があるということです。つまり、どの層で信号を扱い、どの層で電源GNDを入れるかを考慮する必要があります。敏感な信号やノイズ源は隣(横方向)のパターンだけでなく、隣接層(縦方向)にも気を配ることです。

2)インピーダンスコントロールでは

 インピーダンスコントロールの詳細については別途説明しますが、特性インピーダンス値に最も影響があるのは、層間距離です。しかし厄介なことに、多層基板の層間には前述したプリプレグが使用されている層があります。なぜ厄介かというとプレス工程で一旦溶けてしまい、一部が外形の外に流れ出します。その後冷えて固まる訳ですが、樹脂厚が外形全体で均一なのか?ということです。これはプリント基板が大きなサイズになればなるほど気に掛かる点です。
 各基板工場では、様々な製造ファクターを変化させながら均一化の努力をしているところがあります。特性インピーダンス値は、B5サイズのプリント基板であれば、通常はだいたい±10%内には収まります。しかし、特性インピーダンス値にさらなる精度を必要とされる際には、テストクーポンを何箇所かに入れて実測されることをお奨めします。
 プリント基板要求仕様の部分でも書きましたが、特性インピーダンスの有無と該当層は必ず指示して下さい。

 今回はここまでとします。次回は第8回(第8章)「プリント基板の製造と検査」を予定しています。

第7回(第7章)プリント基板の主要な構造と材料 終わり
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アキュベリノス技術講座 シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第6回(第6章)良きパートナー作りを
アキュベリノス技術講座
 シーズン1 プリント配線板について(初級編)

 第6回(第6章)良きパートナー作りを



★今号のポイント
 後工程の協力会社を探すときのポイントは?
 見つけた後工程の協力会社に対して、どういう点に気をつけたら良いか?

1:後工程の協力会社を探すときのポイント

 第3章で、アートワーク設計者の選ぶポイントを述べましたが、ハードウェア開発の後工程というのは、その後にプリント基板製造、部品実装などがあります。できればこれらの窓口も一つであるに越したことはないでしょう。しかも、その窓口はアートワーク設計を主力にされている会社の方が、作業指示の流れに則した工程フローの前段階であるために、指示系統がスムーズに運ぶことが多いようです。
 では、そのアートワーク設計会社はアートワーク設計能力以外にどのような点を持っているところが良いでしょうか。いくつかのポイントを以下に列挙してみます。

 (1)基板製造、部品実装との取引が定常的に何社あるか?毎月の取引はどれぐらいか?
 (2) アートワーク設計会社に各取引工場の特徴を明確に説明できるか?
 (3) 各取引工場の標準製造仕様を手に入れているか?
 (4)これまでの実績を見せてもらえるか?
 (5) 各取引工場への見学は可能か?

 一口に基板製造・部品実装・筐体設計製造といっても開発物の特徴(以下に記載)によって得手不得手があります。「マルチで対応できる」工場は非常に限られています。自分の開発するものが特徴にあったものを手掛けている工場と定常的に取引していて欲しいものです。また、同じ特徴であっても処理能力や万が一の倒産へのリスクヘッジのために複数の会社と取引しているものです。
 また、業界として小規模な会社も多く、腕は確かなところもありますが、「勘」に頼っている場合も少なくありません。
アートワーク設計会社も、その取引工場に対しても、真剣に取引を考えているならば、是非、現場にまで出掛けて自分の目で確かめることは必ずして下さい。
 社員全員が丁寧に挨拶をするか?ラインや資料などが整理整頓されているか?トイレの清掃は行き届いているか?など、技術的な知識がなくても確認できるところはいくらでもあります。『ものづくり』は人が行うものです。

2:後工程の協力会社との取引で考慮する点

 後工程の協力会社の方には、回路設計者に代わって後工程の現場を仕切ってもらう必要がありますから、回路設計者の開発物に対する思いやイメージを正確に伝達する必要があります。お互いに信頼が生まれるまでにはある程度時間が必要でしょう。ではそれまではどのような点に注意すれば良いでしょうか?

1)最終製品の完成イメージの共有

 「製品は動けばそれで良い」という考えを持つ人もいるかも知れませんが、お互いにより良いものを目指して作るという考えや思いは共有したいものです。そのためには、様々な情報を共有することから始まります。開発する製品は、いつどんなところでどんな人がどのように使うのかというところから共有できれば、後工程の方からも提案してもらえる可能性も増えます。というかそのような関係が必要なのです。
 そのためには、金を出す方側だとか、客だという意識を捨て、一緒に『ものづくり』をする専門知識を持つ仲間であるという考えが必要を持ち、回路設計者側から積極的に情報を出すようにして下さい。現場には、人生経験が豊富な大ベテランの方も大勢いらっしゃいます。学べることはたくさんあると思います。

2)理由も説明する

 アートワーク設計者は回路設計者ではありません。しかし、少しでも理解しようと日々努力しています。例えば、設計されたアートワークに、回路上に問題が発見された場合には、その修正案だけではなく、何故、修正が必要なのか、どうしてこの修正案になるのかを、説明して下さい。

3)後工程の協力会社から別の工程に提出される指示書には目を通す

 これはたいていがお任せ状態となって回路設計者が目を通すことはされていません。しかし時間がないとか、回路設計者の範疇ではないという理由で済むでしょうか。この目的は、情報を共有できて、回路設計者の思うものが正確に作られて戻ってきて欲しいからです。
またこのことを通して、お互いの専門分野のことをさらに理解しあえることができれば、もっと良いものづくりができると思います。

4)納期、価格についても忌憚無く相談し合える環境を作る

 後工程からすると、回路設計者の希望は、ほぼ絶対に近いものです。仕事が減少している昨今ではなおさらです。ですので、納期や価格は無理をしてもやってしまいます。そういうものです。ですが、ここで作業状況(負荷)は聞くようにして下さい。無理は長続きするものではありません。
 バランスを取るのは難しいかもしれませんが、自分の利益だけでなく、相手の利益と世間の利益も考えつつ、関係を深めることを是非心がけて欲しいものです。

5)感謝の返事

 後工程の方々は、回路設計者により最終的にどのような製品になり、それがどのような評価されているのかをほとんど知ることはありません。彼らに連絡がある時は、ほとんどがクレームです。ですので、できる限り、回路設計者にとっての完成後の状態を知らせてあげて下さい。必ず、次に繋がって行きます。


 今回はここまでとします。次回は第7回(第7章)「プリント基板の主要な構造と材料」を予定しています。

第6回(第6章) 良きパートナー作りを 終わり
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アキュベリノス技術講座 シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第5回(第5章)工程指示情報 基板製造・実装編
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 シーズン1 プリント配線板について(初級編)

 第5回(第5章)工程指示情報 基板製造・実装編



★今回のポイント
 アートワーク承認はどうやって行うのか?
 基板製造工程への指示はどうやって行われるのか?
 実装工程への指示はどうやって行われるのか?

1:アートワーク承認

 アートワーク承認の前には検図を行いますが、ここで確実に確認をして行わなければなりません。以下に検図のポイントを列挙します

1)検図はビュワーとpdf図面で行うのが一般的

 ビュワーはアートワ−ク設計者が使うCADのメーカーが無償で提供している場合が多く、階層的になっている図面の透視や寸法測定ができるので、チェック作業に便利です。また、pdfは各層毎の図面ですが、絵柄に書込みができるので情報伝達に便利で、アートワーク設計者へのフィードバックとして使用します。ビュワー用のデータとpdfデータは、アートワーク設計者に提出物として要求して下さい。

2)アートワークのチェックポイント

 アートワーク設計者が配線を始める前のタイミングでチェックすることが大切です。

(1)部品の配置
 コネクタの向き、発熱部品周り、ノイズ発生部品周り、パスコンの位置、信号の流れに即しているかなどをチェックして下さい。
高さ制限や部品・パターンの禁止領域など制限事項についても、確実にチェックして下さい。チェックピン周りなどデバッグがしやすい配置になっているか? なども大切です。

(2)アートワーク設計指示書の内容 
 特に、次の項目は重要です。
自分の指示内容が守られているか?
等長(等遅延)配線には、配線長リストを要求してチェックして下さい。
ピンスワップ結果を要求してチェックして下さい。
有極性部品の接続が正しいか?ダイオード、トランジタ、可変抵抗など。アートワーク設計者がライブラリ登録を間違えていないかもチェックして下さい。

(3)層構成 
 信号層と電源GND層がどのように隣接しているか?
 電源とGNDが隣接しかつ重複面積が広く取られているか?
 信号層が隣接している場合、平行配線が長くないか?
 などを、確実にチェックして下さい。

(4)ベタ面 
 アートワーク用CADで自動発生させる場合が多く、アートワーク設計者は修正するはずですが、たまに浮き島(何処にも接続されていない)や、不要なところにベタ面がある場合、アンテナなどになっている場合があるので注意が必要です。

(5)信号線の接続
 ネットリストを支給している場合は不要です。未支給の場合はアートワーク設計者作成ネットリストと回路図との照合チェックを行うことになります。
 同一ネット内でも接続順番が必要な場合はpdfなどでチェック。例えば電源IC付近のパスコンやダイオードの配線順番やパターン幅などです。

3)チェックするポイント(基板製造・実装関係編)

 実装関係編で列挙することは、本来はアートワーク設計者が網羅すべきところですが、万一間違いを起こして配線を進めてしますと大きく開発工期へ影響しかねないので、回路設計者も気を使うことをお奨めします。
 電子回路に直接関係なくとも最終製品状態まで気にかけるのが『ものづくり』の基本です。

(1)基板製造に関して
 インピーダンス測定を希望している場合はテストクーポンがあるか?
 外形部分の加工は、Vカットかミシン目か金型か?
 ビス穴周りはナットやワッシャーを考慮したパターンやレジストの逃げがあるか?
 最小ライン/最小スペースや最小スルホールの値は基板製造標準仕様書に準拠しているか?
 などです。

b)部品実装に関して
 実装方向(ディップ方向)を考慮した配置になっているか?(はんだショート防止)
 (部品実装標準仕様書には方向と部品間Min距離が定義されています)
 Vカットやミシン目で折る場合、部品が近すぎてパッド剥離を起こさないか?
 (部品実装標準仕様書にはMin距離が定義されています)
 はんだ面のSMDパッドサイズはリフローパッド用かフローパッド用か?
 などです。

 これらの検図結果をアートワーク設計者にフィードバックして修正させ、正しくなった時点でアートワーク承認を出して、プリント基板製造工程に進むことを指示します。


2:プリント基板製造工程への指示

 アートワーク設計会社にプリント基板の製造も依頼する場合は、回路設計者としては特段行う作業はありません。しかし、回路設計者が手配する場合もありますので、以下に基板製造工程への最低限の指示内容を列挙します。

1)プリント基板製造用ガーバーデータとガーバーリスト

 ガーバーデータとは、ガーバーフォーマットと呼ばれるEIA(Electronic Industries Alliance:米国電子工業会)規格のプロットデータフォーマットで、エッチング前のフィルム描画時に使うプリント基板製造特有のデータフォーマットです。通常、アートワークCADから出力されます。ガーバーフォーマットには、アパーチャ・サイズ定義を含まない標準ガーバー(RS-274D)と、含んで定義されている拡張ガーバー(RS-274X)の2種類があり、最近は拡張ガーバーの使用が多くなっています。
 ガーバーデータは、プリント基板の内側の各層のデータ以外に外形(またはシート外形)のみのデータも含まれます。シート外形図とは、取り数を考慮した結果の丁付け、および実装工程で必要な捨て板などを入力した外形図のことで、アートワーク設計者が作成します。
ガーバーリストには、フォーマット定義と各ファイル名の説明と標準ガーバーの場合にはアパーチャー・サイズのリスト(Dコード表とも呼びます)も含まれます。

2)ドリル(NC)データ

 ガーバーデータと同じくアートワークCADから出力される、スルホール形成用のドリルのXY座標とドリル径を指定したデータです。その情報を図面化した穴図も出力されます。

3)フィルム描画イメージデータ

 これは基板工場でガーバーデータを読み込んだ際に正しく読み込めているかを見比べるフィルムイメージの絵柄のことで、pdf形式で提供されることが多いです。これもアートワークCADから出力されます。

4)層構成指示書

 層毎に信号またはベタ、銅箔厚が定義され、各層間の絶縁厚や板厚が記載されており、インピーダンス制御基板には必須の情報です。層毎の信号またはベタの構成とインピーダンス制御を行層はアートワーク設計者が指示し、各層の銅箔厚や絶縁厚は、在庫状況やプレス条件が関係するために、基板工場が決める場合が多いです。

5)プリント基板製造仕様

 記載内容例を以下に列挙します。この仕様と共にに必要枚数と希望納期を連絡します。
  シート外形サイズ、単品外形サイズ
  層数、板厚、銅箔厚
  最小ライン/スペース
  シルク面と色、レジスト面と色
  表面処理方法


3:実装工程への指示

1)実装図、シート外形図

 実装図とは、部品の位置や向きがリファレンス番号とともに図示されているもので、アートワークCADから出力されます。回路設計者はこれを基に後述の実装指示書を作成する場合があります。実装工程ではこれを使って工場独自で実装作業者への指示書を作成し指示します。シート外形図は、支給されるプリント基板との外観確認とマウンタ(自動実装機)への座標設定時の確認として使用されます。

2)部品リスト

 アートワーク設計工程の依頼時に支給するものですが、アートワーク設計時に指示した変更内容(部品の増減や定数変更など)も網羅した最終の部品リストがここで必要です。また、プリント基板上ではパッドなどを設けてありますが、実際には実装しない部品もあったりしますので、その場合もこの部品リストの該当部品欄に「未実装」と明記しておく必要があります。実装工程は最終工程でもあり工期が厳格に決められていますので、小さいミスが工期延長につながりかねません。指示内容の正確さと最新版管理には特に注意が必要です。

3)部品座標データ、メタルマスクデータ

 これらはアートワークCADから出力されるものです。
 部品座標データには、リファレンス番号、XY座標、回転確度、実装面の情報があるテキストデータです。原点は実装工場から指定されることもありますが、多くは部品面から見た外形の左下角になります。
 メタルマスクデータは、ガーバーフォーマットで出力されます。

4)実装指示書

 これは基本的には回路設計者が作成するものですが、アートワーク設計指示書の中で、実装に関する項目を指示した場合は、アートワーク設計者が受け継いで作成する場合もあります。指示項目の例を以下に列挙します。

(1)未実装部品:前述の部品リストで指示する場合が多いです。
(2)共用パッド部:同一部品で異なるピッチのSOPなどを、プリント基板上ではどちらでも実装可能な状態にして、実際実装する際には明確に指示します。部品リストに明記する必要があります。
(3)ジャンパー線:プリント基板上では配線領域が無い場合やガーバー出力後の配線変更時など、ジャンパー線で対処が必要な場合には、接続個所とジャンパー線の太さや材料、引回し方、束ね方を指示します。
(4)ヒートシンク部:放熱シートやシリコングリスの有無やビスの材料を指示します。
(5)リード加工:アキシャル部品やラジアル部品でリードを直角に曲げて実装させたいときなどに指示します。
(6)クリンチの有無:リード部品ではクリンチする方がきれいに固定されますが、後日デバッグなどでリワークの可能性がある場合は取り外し難いので、クリンチしないほうが良い場合もあります。
(7)フラックス洗浄の有無
(8)銅箔厚が70μm以上の場合は、見積依頼段階からの確認が必要です。はんだ付けの際に熱が逃げやすいので、通常のはんだ付け方法では不可能になってくるためで、工数も掛かります。

4:電子部品

 実装する部品を実装工場に持ち込む訳ですが、実装工場では何をどれだけ持ち込まれたかをまず検品しますので、持ち込んだ部品のリストも付けることが大切です。その際にリスト上では、SMD、アキシャル、ラジアル、手挿入部品を分けて記載しておくと、実装工程でのロスが減ります。

 今回はここまでとします。次回は第6回(第6章)「良きパートナー作りを」を予定しています。

第5回(第5章)工程指示情報 基板製造・実装編 終わり
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アキュベリノス技術講座 シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第4回(第4章)工程指示情報 アートワーク設計編
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 シーズン1 プリント配線板について(初級編


 第4回(第4章)工程指示情報 アートワーク設計編

 ★今回のポイント
  アートワーク設計以降の作業に必要な情報にどんなものがあるのか?
  電子回路設計者が指示すべきことは何か?

 今回は、アートワーク設計以降の各工程に必要な情報を示し、その内容と、指示のポイントを示して行きます。列挙します。なお、提供者については標準的な場合の想定ですので、現場での調整は必ず行って下さい。
表4-1に必要とする資料、データなどをまとめています。なお、電子回路設計者が部品調達を行うものと想定した場合です。



 電子回路設計者がアートワーク設計者に提供すべき情報から順次説明と注意事項を説明します。

1)回路図とネットリスト

 回路図にぜひ記載して欲しい内容を以下に列挙します。

  (1)有極性部品のピンアサイン
  (2)特定のパターンの太さもしくは定常電流値(分岐による変化含め)
  (3)特定の部品同士の接近距離(近づける場合も離す場合も)
  (4)特定のパターン間あるいはブロック間の沿面距離
  (5)信号のジャンプ先のページ番号

 回路図面の出力形式としては、pdfが一般的です。しかも文字検索ができる状態のpdfの方が、回路図のページ数が多い程アートワーク設計者の効率は上がります。
 ここで最も注意すべき点は、有極性部品のライブラリ上のピンアサインが数字の場合です。これはアートワーク設計者にしっかりと伝達しないと大事故に繋がりかねません。アートワークCADにおいてもライブラリ登録を行ってから設計するからです。つまり、『1』だけと表記されたピンの極性が『+』なのか『-』なのかを判断できなからです。
 また、回路設計CADか抽出されるネットリストを必ず支給して下さい。ネットリストを支給できない場合は、アートワーク設計者が手でキーインするという原始的な手法を取らざるを得ないケースもありますが、正確さと開発期間に問題があります。
 フリーソフトの回路設計CADを使用されるケースもありますが、バグによる回復時間やアートワークCADへのフォーマット変換に手間取る工数などを考えて、可能な限り一般に使われているCADの使用をお奨めします。

2)部品リスト

 Excelデータでの支給が、後々加工もし易くて一番です。回路図上のリファレンス番号も必ず記載して下さい。通常の回路設計CADならばリファレンス番号を含んだ出力が可能です。もし、支給後に回路変更が生じた場合は、部品リストも出力して、常に最新状態を指示して下さい。
 また、部品の入手が電子回路設計者側であれば、部品のパッケージまで明確になる部品名称(末尾の文字まで)が必要です。同じ機能のLSIでもSOPやSSOPなどパッケージが色々だからです。
 もし、実装が不要な部品があれば、この部品リストに記載して下さい。部品リストは実装工程への指示書にも使用します。

3)部品データシート

 電子回路設計者は設計時に必ず入手しますが、それをアートワーク設計者にも支給して下さい。特にアナログICやDC-DCコンバータ類などでは、メーカーのパターンの引き回し指示などについて、アートワーク注意事項が記載されている場合がありますので、アートワーク設計者への注意喚起を忘れないことが重要です。
 また、アートワーク設計者はこのデータシートの部品パッケージ寸法を見て、CADへライブラリ登録をしますので、極めて重要です。

4)アートワーク設計指示書

 この指示書の内容如何で、出来上がりが良いものかそうでないかが決まると言っても過言ではありません。ここは電子回路設計者として出来上がりを表現するところです。内容的には、基板の仕様や筐体寸法なども一緒に記載されることが多いです。
 以下に、アートワーク設計者から見て記載して欲しい項目を列挙します。基板や実装関連の項目で、未定の場合はアートワーク設計者と相談して決めても良いです。

(1)基板仕様
 プリント基板サイズ、層数、板厚、シート外形サイズ、必要枚数、表面処理方法、シルク必要面と色、レジスト必要面の色、層構成、特性インピーダンスの有無と該当層

(2)単体外形寸法図
 取付け穴位置、部品高さ制限領域、配線制限領域

(3)シート寸法図
 Vカットやミシン目、外形加工方法(ルーターまたは金型)、捨て板、実装用基準穴、DIP方向、繊維方向

(4)アートワーク設計仕様
 部品の配置面や方向・隣接間距離指定、発熱部品指示、配線面の指定、配線長指定、引き回し指定、沿面距離指定、GNDガード指定、ピンスワップの許可/不許可、ヒートシンク下などのベタ処理指定、余白部分のベタ処理指定、1点アースの希望位置、シルク文字の大きさと向き、個別のシルク文字やマークの指示

(5)実装時の指示
 ヒートシンクの放熱シートやシリコングリスの有無、ビスの材質、ビス部のワッシャー種類や個数指示、ジャンパー接続指示、ホットメルト個所の指示

 上記の中からいくつかをピックアップして説明を補足します。

【シート外形サイズ】
 複数の別基板との集合あるいは同基板のコピーをして、コストパフォーマンスを稼ぐために1シートで作製することが良くあります。なぜコストパフォーマンスを稼げるのかなどは別の章でプリント基板の取り数もまじえて説明します。

【表面処理方法】
 プリント基板の銅箔が露出した部分(パッドやランド)をどのように処理するかの指示です。詳しくは、別の章にて説明します。

【層構成】
 多層板の場合、信号層や電源層、GND層をそれぞれ第何層にするかを指示することになり、任意の場合はアートワーク設計者が基板製造の都合だけで決定する場合があります。しかし、インピーダンス制御が必要な場合は、その信号名もしくは該当する層をできる限り指定することが望ましいです。では、どのような理由で、どのように指定するかは、別の章で説明します。

【ピンスワップ】
 FPGAや抵抗アレー、DIPスイッチなどはピンスワップ可能な場合があります。アートワーク設計者の配線の都合でピンスワップしても良い場合は指示しておくと、回り込み配線が軽減されるメリットがあります。しかし、スワップ情報は必ず電子回路設計者にフィードバックさせて回路設計CADに反映(バックアノテーションと言います)させておかなければならないので、このバックアノテーションが回路設計CAD上で自動で可能かどうかは回路設計CADメーカーに確認をしておいて下さい。1000ピンを超えるようなFPGAのバックアノテーションを手動で行おうとすると、数日掛る場合があります。

 今回はここまでとします。次回は第5回(第5章)「工程指示情報 基板製造・実装編」を予定しています。

第4回(第4章)工程指示情報 アートワーク設計編 終わり
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アキュベリノス技術講座 シーズン1 プリント配線板について(初級編) 第3回(第3章)アートワーク設計者のスキルを知る
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 シーズン1 プリント配線板について(初級編)

 第3回(第3章)アートワーク設計者のスキルを知る


 ★今回のポイント
  アートワーク設計の中身は?
  どんなスキルを持ったアートワーク設計者なら任せられるか?

1:アートワーク設計とは何か?

 みなさんは電子回路設計の技術者です。では、アートワーク設計、および、その設計者はどのような業務を行っているのでしょうか?ここでは、アートワーク設計の実務の流れに沿って説明します。また、その時に、回路設計者としてのポイントも説明します。

 (1)打ち合わせ
 (2)基板製造・実装情報
 (3)ライブラリ登録
 (4)基板外形入力
 (5)接続情報の読込み
 (6)部品配置
 (7)パターン配線
 (8)DRC(Design Rule Check)
 (9)シルク編集
 (10)全体チェック
 (11)顧客承認完了
 (12)基板製造用ガーバー出力
 (13)実装用データ出力

 以上が、アートワーク設計の大きな流れですが、その中で特に重要と思われる作業項目の内容と、その時の回路設計者としての注意点などを説明します。

(1)打ち合わせ
 詳細は次章で説明しますが、ここは回路設計者がアートワーク設計者にどんな基板をデザインして欲しいかを伝える重要な工程です。設計指示書を提出し、丁寧に指示をすることが大切です。指示の内容については、次章以降で説明します様々な技術要素が含まれます。

(2)製造実装情報
 プリント基板製造や部品の自動実装に必要な情報になります。
通常は回路設計者が直接指示する必要はありませんが、アートワーク設計会社や部品実装会社が持っている標準的な仕様とは異なる場合は指示が必要です。
 また、依頼する製造数量(試作なのか量産までの想定なのか)によってプリント基板製造や部品実装では各設定諸数値が異なってくることは理解しておくべきです。
 つまり、今は試作でも数ヵ月先に必要な量産数量をあらかじめ伝えておくことで、最初から量産スペックを想定してデザインする方が、費用的に助かるのです。もちろん量産数量と言っても様々ですので、試作と変わらない量産数量の場合もありますので依頼先と相談して下さい。
 どのような値が、どう違うのかをすぐに回答できるアートワーク設計者はかなり経験があります。
おおよそ次のような項目です。

【プリント基板製造用情報】
 ・対プリント基板端からの銅箔・スルホール・レジスト・部品外形・キリ穴間の各最短距離(プリント基板基板端には、ルーター加工・Vカット・ミシン目・金型の4種類それぞれがあります)
 ・最小の導体幅(L)/導体間隔(S)
 ・スルホール径に対するランド径とレジスト径基準(スルホール径はドリル寸法と仕上がり寸法別に記載されます)
 ・最小のスルホール間距離
 ・スルホール/パターン/SMDパッド それぞれの最小間隔
 ・SMDパッド/レジスト間の最小距離
 ・ミシン目の形状・ピッチ・幅
 ・ステ板部のベタパターン形状(ソリ防止)
 ・製造密番形状
 ・金型ガイド形状
 ・ULマーク種類と形状
 ・広面積ベタのスリット基準(安全規格対策)
 ・最小シルク文字寸法
 ・レジストとシルクのズレ幅基準
 ・角穴・長穴基準(工場によっては角穴不可もあります)

【部品実装用情報】
 ・SMDパッド寸法(フロー用、リフロー用)
 ・チップ部品座標データ内容
 ・マウント用認識マーク形状と位置(対基板と対SOP, QFP, BGA)
 ・捨て板とディップフローの方向
 ・ディップフロー時のはんだ溜まり形状基準(QFP, SOP, 狭ピッチリード部品など)
 ・マシン毎の板厚と外形サイズの適応およびデッドスペース基準
 ・各部品間の最小距離基準
 ・ベタ内ランドのサーマル形状
 ・リード部品(アキシャル・ラジアル別)のクリンチ方向とアンビル寸法および隣接パターン禁止範囲
 ・リード径に対するスルホール径の基準

(3)ライブラリ登録
 ここからは、アートワーク設計会社が中心となる作業です。
各部品のデータシートを基に、CAD上の部品を作成する工程です。過ちを低減するために自分が使ったデータシートを支給して下さい。
 アートワーク設計上、もっとも過ちが発生しやすい工程です。依頼先に過ちに対してどのような防止策を取っているかも確認して下さい。
 押えるポイントは、大きくは以下の2つです。

 A)回路図のピンアサインとCAD部品のピンアサインの一致(有極性部品、コネクタなど)
 B)実装できるパッドサイズかどうか? つまり実装仕様に合致しているか?

 両方ともアートワーク設計者で完璧にしておくべきものですが、特に(A)はライブラリに過ちがあると開発期間に重大な影響を及ぼすことになり兼ねないので、念を押して下さい。
 データシートを支給した時に、上記のような物理的サイズ以外に、アートワークに関する注意事項が記載している場合もありますので、アートワーク設計者が気付くかどうかを確認するのも、アートワーク設計者のレベルを知るのに役立ちます。

(4)基板外形入力
 凹凸の多い外形などは、もしあらかじめAutoCadなどの図形CADで入力されたものがあれば提出して下さい。
 複数枚のプリント基板を注文するなら、コストが最小になる取り数を計算してもらい、シート付け状態に加工してもらった方が良いです。取り数の計算については、プリント基板製造のところでお話します。

(5)接続情報の読込み
 いわゆる回路図入力ツールから出力したネット情報(回路設計者からアートワークへ支給)をアートワークCADへ読込む作業です。どんな形式のデータなら読込み可能か事前に確認しておいて下さい。
 この際に明らかに論理的におかしい個所はエラーとして出力されます。論理エラーではないものは当然発見できません。その一例はライブラリ登録時のポイントの(A)で、有極性部品のピンアサインの違いです。

(6)部品配置
 この作業は、アートワーク設計者任せにせず、回路設計者自ら積極的に指示や相談をして下さい。回路図には表れませんが、性能(放熱、ノイズ対策など)、使い勝手(デバッグのし易さなど)や、部品実装の難易度などに大きく影響をします。特に注意すべきポイントを以下に示します。

 A)実操作時の使い勝手。デバッグ時の使い勝手
 B)コネクタの方向や位置
 C)接近させたい部品、遠ざけたい部品の位置
 D)パスコンの数と位置
 E)制限や条件をつけた個所が思うようになっているか
 (この段階でもアートワーク設計者のレベルが分かります。)

(7)パターン配線
 ライブラリ登録時のピンアサインが完璧で、かつネット支給をしていれば、パターンを一本一本追わなくても、接続は必ず回路図通りになります。
ただし、アートワーク設計者の能力により、性能や納期に影響が出ます。特に、インピーダンス、等長配線、差動配線、ガードリング、パスコンへの配線などは、設計指示書で指示して下さい。また、そのパターンの信号の周波数は伝えて下さい。
また、上述の項目以外では、以下の項目について検討されているかも確認して下さい。

 (A)パターン幅:プリント基板の銅箔厚が35μm、幅1mmで1Aの電流容量が目安ですと言われますが、できればその2倍〜3倍ぐらいにする方が良いと思います。
 (B)パターン長:FR-4材で無負荷の場合、1nsで150〜160mmの伝播速度です。負荷によりますが、通常1nsで80〜100mmが目安のようです。
 (C)パターン間隔(S):デジタル信号:S=L
    クロック〜信号:S=3L(L=パターン幅)
 (D)その他:トランスやフォトカプラの1次−2次間
DC-DCコンバータ内コイル直下の内外層のくり抜き(内外層の銅箔間距離が短いことを案外見逃しやすい)


2:任せられるアートワーク設計者とは?

1)使用するLSIのアートワーク設計上の注意点を知っているか?

 できるアートワーク設計者を探すポイントは、アートワーク設計して欲しい回路の中で、中心となる部品(特にLSIなど)のアートワーク設計経験の有無を聞いた方が実際的だと思います。そのLSIの名称を言って、アートワーク設計上注意すべき点を知っているかを尋ねます。1回でも経験していれば経験があると言えますが、注意点を覚えているほど経験していれば大丈夫と言えるのではないでしょうか。逆に回路設計者の方が初めて使うLSIであっても、最近はデータシートにアートワーク上での注意点が記載されていることが多いかと思いますので、それを質問するだけも良いと思います。

2)アートワーク指示書や資料の間違いを指摘してくれるか?

 こちらから提出するアートワーク指示書に、仮に過ちがあったとしても、残念ながら普通のアートワーク設計者は、「言われたことを正確にやる」という人が多いので、これも悪意なく気付かず作業を進行させてしまうことがあります。
 見積資料を渡した時や事前の打ち合わせなどで、質問が多いアートワーク設計者は、良いアートワーク設計者の場合が多いので、手間と思わす対応した方が良いと思います。その中でお互いににパートナー意識が濃くなって行くものです。

3)改善提案はあるか?

 回路設計者が用意するアートワーク指示書や資料、データの形式など、お互いに出力し易いものや受け易い形があるものです。作業し易いということは、効率アップにつながります。このようなことをどんどん提案してくれるところが助かります。
 もちろん、アートワーク設計そのものの提案もどんどんしてくれるところが良いパートナーと言えます。

 今回はここまでとします。次回は第4回(第4章)「工程指示情報 アートワーク設計編」を予定しています。

第3回(第3章)アートワーク設計者のスキルを知る 終わり
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(本書は、株式会社アキュベリノスの著作物です。許可なく掲載、転載等を行うことを禁止します。)


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